
【この記事はこんな方に向けて書いています】
・職場や家庭で意見のぶつかり合いを減らしたい方
・議論で相手を否定せずに自分の意見も伝えたい方
・コミュニケーションスキルを向上させたいビジネスパーソン
「たしかに、それはそうだね」――この一言があるだけで、相手の気持ちを柔らかくほぐし、対立を防ぐ“潤滑油”になることをご存じでしょうか?心理学的にも「承認の返し」は相手の防衛反応を抑え、話し合いを建設的に進める効果が実証されています。今回は「たしかに」を効果的に使う会話術を、実際の調査データや心理学研究を交えて、しっかり深掘りして解説します。
まずは「たしかに」の威力を裏付けるデータから。心理学者カーライルらの実験(2009年)では、会話中に相手の発言を一度肯定してから自分の反論を提示すると、相手の同意率が平均35%向上したといいます。また、日本の社会人1,200名を対象に行われたビジネスコミュニケーション調査(2024年)では、「相手の意見にまず『たしかに』と共感する」人は、チームの人間関係満足度が90%、平均を大きく上回るという結果も出ています。
では具体的に、どんな場面で、どのように「たしかに」を挟めば効果的なのか?結論からお伝えすると、以下の3つのポイントを押さえるとグッとスムーズになります。
- 先に“共通認識”をつくる
- 相手の感情を受け止める
- 自分の主張を自然につなぐ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 先に“共通認識”をつくる
会話の冒頭で「たしかに、その点は大事ですよね」と共通の土台を作ることで、対立の芽をつみ取ります。公共政策の討議を再現したシミュレーション実験(2018年)では、最初に共通認識を確認したグループは、その後の合意形成までの時間が平均40%短縮されたという報告があります。具体的には…
- 相手:「このプロジェクト、納期が厳しすぎると思うんだよね。」
- あなた:「たしかに、スケジュールにはかなり余裕がないですよね。」
この「たしかに」で、問題意識を共有でき、相手は「話を聞いてもらえている」と感じます。その後に自分の意見や代替案を出すと、相手は防御せずに耳を傾けてくれやすくなります。
2. 相手の感情を受け止める
人は「理解されたい」という欲求を持っています。ビジネスパーソン1000名を対象にした日本マーケティングリサーチ機構の調査(2023年)では、「自分の感情に共感してくれる人」に対する好感度が86%、一度否定された相手の好感度は24%に留まったというデータもあります。感情を受け止める場面では、単なる事実の肯定ではなく感情そのものに「たしかに」が有効です。
- 相手:「最近、残業が多くて本当に疲れてるんだ…」
- あなた:「たしかに、毎日遅くまで大変ですよね。心身ともにしんどいと思います。」
この「大変ですよね」の前に込めた「たしかに」が心のバリアを下げ、相手は「愚痴を言っても大丈夫」と安心します。すると、解決策を一緒に考える土壌ができあがります。
3. 自分の主張を自然につなぐ
「たしかに」を一度挟むと、次に自分の提案や反論をしやすくなります。心理学的には「イエスセット」と呼ばれる技法で、相手に連続的に小さな“yes”を積み重ねることで、大きな説得にも抵抗を感じにくくする効果があります。
- 相手:「でも、この仕様のままだとコストが増えそうだね。」
- あなた:「たしかにコスト面は心配ですよね。そこで、△△を見直して効率化できないか検討してみました。」
イエスセットの理論では、「たしかに」のような肯定を3回以上連続で行うと、大きな要求に対しても同意率が約70%にまで高まるといいます(心理学研究/2015年)。大きな提案をするときは、事前に小さな肯定を意識して複数回挟むことで、スムーズに話を進められるでしょう。
ケース別「たしかに」で回避するシチュエーション
- チーム内の意見対立
- 「たしかに、その点は見落としていました。私も同じ懸念があります。」
- →対立しているポイントを認め、協力的な姿勢に持ち込む。
- 「たしかに、その点は見落としていました。私も同じ懸念があります。」
- クレーム対応
- 「たしかに、ご不便をおかけして申し訳ありません。すぐに調査して改善策をお伝えします。」
- →顧客の不満を受け止めた上で行動を約束し、信頼回復を図る。
- 「たしかに、ご不便をおかけして申し訳ありません。すぐに調査して改善策をお伝えします。」
- パートナーや家族の議論
- 「たしかに、家事分担のバランスは大事ですよね。改善できるポイントを一緒に考えましょう。」
- →家庭内のゆるやかな対話を促し、感情的な衝突を回避。
- 「たしかに、家事分担のバランスは大事ですよね。改善できるポイントを一緒に考えましょう。」
「たしかに」を使うときの3つの注意点
- 安易な同調は逆効果に
相手の意見に無条件で賛成しすぎると「薄っぺらい」と感じられることがあります。必ず次に具体的な言葉や提案を続けて、真剣さを伝えましょう。 - タイミングを見極める
相手が怒りや苛立ちの最中に「たしかに」と軽く返すと、余計に苛立たせる場合があります。まずは相手を落ち着かせる言葉(「深呼吸しましょうか」など)を入れた上で使うのがベターです。 - トーンと表情も大事
テキストだけでなく、対面や電話で使う場合は、声のトーンやアイコンタクト、うなずきなどの非言語コミュニケーションも合わせましょう。米国心理学会の研究(2017年)では、非言語の肯定サインがあると信頼度が20%増すと報告されています。
「たしかに」を会話に取り入れるだけで、相手の防御心を和らげ、建設的な対話がぐっと進みやすくなります。まずは今日のミーティングや日常会話で、意識的に1〜2回使ってみてください。徐々に「相手の意見を受け止める力」が身につき、どんな場面でも衝突を最小限に抑えられるはずです。
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