
【この記事はこんな方に向けて書いています】
・結婚相談所での活動に、どこか「人間味のなさ」や「ドライさ」を感じている方 }
・年収や学歴といった「条件」で人を選び、選ばれることに、罪悪感や違和感を抱いている方
・結婚相談所では、ドラマのようなロマンチックな恋愛はできないのではないかと疑っている方
・結婚相談所のシステムを正しく理解し、後悔なく、賢く利用したいと考えている方
お相手検索画面にズラリと並ぶ、顔写真と、年齢、年収、学歴、職業…。まるで商品カタログを眺めるかのように、私たちはマウスをクリックし、未来のパートナー候補を「絞り込み検索」する。
お見合いの席では、わずか1時間という制限時間の中で、相手が自分にとって「買う価値のある商品」かどうかを見極めようと、互いに探り合いの質問を繰り返す。
結婚相談所での活動を進める中で、ふと、そんな風に感じたことはありませんか? そこにあるのは、純粋な心の惹かれ合いではなく、条件と条件を突き合わせる、まるでビジネス交渉のような空気。
そう、結婚相談所とは、良くも悪くも、神聖なはずの「結婚」を、極めて合理的な「取引」へと変えてしまう場所なのです。
「なんて夢のない話だ」と、眉をひそめたくなる気持ちも分かります。しかし、ここで思考を止めてしまうのは、あまりにもったいない。
この記事では、なぜ結婚相談所が「取引」の場に見えてしまうのか、そのシステム的な本質を解き明かします。そして、一見すると無機質に見えるその「取引」が、実は多くのメリットを秘めているという、逆説的な真実にも光を当てていきます。
この記事を読み終える頃、あなたは「取引」という言葉の呪縛から解放され、結婚相談所というシステムを賢く利用し、「取引」の先にある本物の「愛情」を手に入れるための、全く新しい視点を得ていることでしょう。
システムが「取引」を生む。プロフィールという名の“商品カタログ”
まず、なぜ結婚相談所での婚活が「取引」のようになってしまうのか。それは、個人の感情の問題というよりも、相談所が提供する「システム」そのものに原因があります。
結婚相談所の最大の機能は、膨大な会員の中から、あなたの希望条件に合う相手を効率的に探し出すことです。そのために、会員は自らの情報を「プロフィール」という形にデータ化し、登録します。
・年齢、身長、体重、容姿(写真)
・居住地、出身地 ・学歴、職業、年収
・資産、家族構成 ・趣味、喫煙・飲酒の習慣
これらのデータは、お相手を検索するための重要な「キーワード」となります。私たちは、このキーワードを使ってデータベースを検索し、候補者を絞り込んでいく。この行為そのものが、人間を「スペックの集合体」として捉え、比較検討するという、「取引」の基本的な構図を生み出しているのです。
自然な出会いであれば、まず相手の笑顔や声、醸し出す雰囲気といった、言葉にできない人間的な魅力に惹かれ、後から少しずつプロフィール情報を知っていきます。しかし、相談所では、その順番が完全に逆になります。まず「商品カタログ(プロフィール)」を見て、興味を持った「商品(相手)」に、お見合いという名の「商談」を申し込む。
このシステムの中にいる限り、私たちの思考が「取引」的になるのは、ある意味で避けられないことなのです。
データで見る「条件」の重要性。恋愛結婚との決定的な違い
「条件で人を選ぶなんて、不純ではないか」 そう感じるのは、私たちが「結婚は恋愛の延長線上にあるべきだ」という価値観を、強く持っているからです。
しかし、少し視野を広げて、客観的なデータを見てみましょう。 大手結婚相談所などが公表するデータを見ると、男女ともに、結婚相手に求める条件として「性格」「価値観の一致」といった内面的な要素を挙げる人が最も多いのは事実です。しかし、それに次いで、男性は「相手の容姿」、女性は「相手の経済力」を重視する傾向が、依然として根強く存在します。
これは、結婚が単なる感情の結びつきだけでなく、「生活」そのものであることの表れです。特に、前回の記事でも触れたように、出産などでキャリアの中断を余儀なくされがちな女性にとって、パートナーの経済力は、安定した生活を送るための重要な基盤となります。
つまり、私たちは自然な出会いにおいても、無意識のうちに相手の「条件」を値踏みしているのです。結婚相談所は、そのプロセスを「可視化」し、「効率化」しているに過ぎない、と捉えることもできます。
さらに興味深いデータとして、「お見合い結婚は、恋愛結婚よりも離婚率が低い」という説があります。これには様々な意見がありますが、一説には、感情の盛り上がりでスタートする恋愛結婚と違い、お見合い結婚は、結婚生活に不可欠な「条件」や「価値観」のすり合わせを事前に行うため、結婚後のギャップが少なく、関係が安定しやすいからではないか、と考えられています。
「取引」から始まる結婚は、必ずしも不幸な結末を迎えるわけではない。むしろ、その合理性こそが、長期的な安定に繋がる可能性を秘めているのです。
「取引」から始まる関係の3つのメリット
では、「取引」のように合理的に進める婚活には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。感情的な恋愛結婚のデメリットと比較しながら、3つのポイントを見ていきましょう。
メリット1:過度な期待がなく、冷静に相手を判断できる
恋愛中は、「恋は盲目」状態で、相手の欠点が見えなくなったり、自分に都合よく相手を理想化してしまったりしがちです。そして、結婚後に「こんなはずじゃなかった…」と幻滅する。これは、よくある失敗パターンです。 一方、「取引」から入る関係では、最初から相手を冷静かつ現実的な視点で見ることができます。過度な期待がない分、小さな長所に気づきやすく、相手のありのままを受け入れやすい、というメリットがあります。
メリット2:結婚の「本質的な対話」がスムーズに進む
恋愛中は、お金の話や家族の話、将来の仕事の話など、現実的な話題は「ムードが壊れる」と言って避けられがちです。しかし、結婚生活において、これらの対話は避けては通れません。 結婚相談所では、お互いが「結婚」という共通の目的を持っているため、こうしたシビアな話題も、早い段階からオープンに話し合うことができます。この「本質的な対話」を先に行うことで、価値観の致命的なズレを事前に回避できるのです。
メリット3:感情の浮き沈みに左右されない「安定した関係」を築きやすい
「燃え上がるような恋」は、いつか冷めてしまうのが自然の摂理です。そのドキドキ感がなくなった時、「愛情が冷めた」と勘違いして関係が終わってしまうカップルは少なくありません。 しかし、「取引」から始まる関係は、そもそも「ドキドキ」よりも「信頼」や「尊敬」をベースにしています。そのため、感情の波に一喜一憂することなく、穏やかで安定したパートナーシップを築きやすい、という側面があります。
「取引」で終わってしまう人の、致命的な3つの勘違い
しかし、もちろん、誰もがこのメリットを享受できるわけではありません。「取引」をただのスペック交換で終わらせてしまい、人間関係を築けない人には、共通する勘違いがあります。
勘違い1:「自分のスペック=自分の価値」だと信じ込んでいる
高い年収や学歴、優れた容姿を持っている人にありがちな勘違いです。自分の「商品価値」が高いことにあぐらをかき、相手への配慮や、内面を磨く努力を怠ってしまう。しかし、どんなに優れた商品でも、店員の態度が悪ければ、客は買う気をなくしますよね。スペックは、あくまで相手の興味を引くための「きっかけ」に過ぎないのです。
勘違い2:「相手も割り切っている」と決めつけている
「ここは取引の場なんだから、相手も条件しか見ていないはずだ」と決めつけ、人間的な温かみのない、ドライなコミュニケーションに終始してしまう。しかし、相手も感情を持った一人の人間です。たとえ入り口は条件だったとしても、その先には、心の繋がりを求めています。その心を無視した態度は、相手を深く傷つけ、どんな良縁も遠ざけてしまいます。
勘違い3:「取引成立(成婚)=ゴール」だと思っている
これが最も致命的な勘違いです。結婚相談所での「成婚」は、あくまで「結婚生活のスタートラインに立つ権利を得た」ということに過ぎません。無事に商談がまとまっても、その後の人生という長い「アフターサービス」の期間で、関係を育む努力を怠れば、その取引はいずれ破綻します。
「取引」の先へ。スペックを超えた「人間関係」を築くためのヒント
では、どうすれば私たちは、この「取引」というシステムを賢く利用し、その先に続く本物の人間関係を築くことができるのでしょうか。
その鍵は、プロフィール(=商品カタログ)から得られる情報を、「取引の材料」としてではなく、「相手という人間を深く知るための“きっかけ”」として使うという、意識の転換にあります。
例えば、お見合いの席で、 「ご趣味は旅行なんですね。私もです」と共通点で盛り上がるだけでなく、 「プロフィールに〇〇へ旅行されたと書いてありましたが、なぜその場所を選んだのですか?そこで何を感じましたか?」と、その人の価値観や感性が垣間見える「物語」を質問してみる。
「年収〇〇円とは、素晴らしいですね」とスペックを褒めるだけでなく、 「そのお仕事で、一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?逆に、一番大変なのはどんなことですか?」と、そのスペックを築き上げたプロセスへの敬意と興味を示す。
「取引」のテーブルに着きながらも、常に相手をスペックの集合体としてではなく、人生の物語を持つ、かけがえのない一人の人間として扱う。その敬意ある姿勢こそが、相手の心を動かし、「この人となら、取引を超えた関係が築けるかもしれない」と思わせるのです。
結婚相談所が、結婚を「取引」に変える場所である、という側面は否定できません。 しかし、それはあくまで、出会いの「形式」の話です。
その形式の中で、相手を「商品」として値踏みし続けるのか。 それとも、未来の「パートナー」として敬意を払い、深く知ろうと努めるのか。
その選択権は、常にあなた自身にあります。 合理的な「取引」のメリットを最大限に活かしつつ、その先にある人間的な温かい繋がりを見つけ出す。それこそが、現代における最も賢く、そして誠実な婚活の形なのかもしれません。
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